年頭所感
令和7年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
昨年は、年始の能登半島地震をはじめとして、台風や豪雨など、多くの予期せぬ自然災害が発生した一年でした。被災された方々に、改めて心よりお見舞いを申し上げます。特に能登半島地震で被害を受けた地域では、復旧・復興はいまだ半ばです。経済産業省として、引き続き復旧・復興に全力を尽くしてまいります。
世界が激動する中で、我が国の経済と社会の安定をいかに守り抜くかが問われた一年でもありました。依然として中東やウクライナにおける戦争は収束の兆しを見せず、我が国のエネルギー政策や産業政策も大きな影響を受けています。また、アメリカではトランプ新政権が発足しようとしており、経済・外交政策がどう変化するか、その一挙一動に世界が注目しています。
こうした中、産業政策については、近年のDXやGXなどの成長分野への積極的な国内投資が実を結び始めています。実際、30年ぶりとなる水準の賃上げ、100兆円を超える積極的な設備投資、史上最高水準の株価、そして名目GDPが初めて600兆円を超えるなど、顕著な成果が現れました。しかし、現在の物価高の影響を受け、消費は依然として力強さを欠いています。このような状況を踏まえ、長年続いたコストカット型経済から「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への確実な転換を実現するためには、物価高に負けない持続的な賃上げの実現と、これをさらなる消費と投資へと結びつけていく必要があると考えています。
大企業だけではなく、地元の中小企業においても「稼ぐ力」をつけるため、イノベーション促進のための量子や宇宙分野への大規模投資や、スタートアップの事業化、海外展開への支援をしていきます。また、人手不足という社会的課題に対処するため、ロボット等で省力化や生産性向上を実現する技術の開発を促進するオープンな環境を整備し、産業のDXを推進していきます。
取引適正化に向けて、「価格交渉促進月間」における取組をはじめ、産業界の皆様には多大な御協力を賜り、感謝申し上げます。今後もサプライチェーン全体で適正な価格転嫁を定着させるため、様々な取組を進めてまいります。
GXでは、昨年末にとりまとめた「GX2040ビジョン」と「エネルギー基本計画」にもありますように、電力需要が増加する中、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などの脱炭素電源の最大限の活用を進めてまいります。GXの推進にあたっては、アジアの同志国との連携も強化していきます。昨年の第2回AZEC首脳会合では、日本のリーダーシップのもとで「今後10年のためのアクションプラン」が合意され、今後、ルール形成を含む政策協調とプロジェクトの実施が進んでいきます。
経済安全保障の確保に向け、技術革新への投資や需要側の取組を含めたサプライチェーンの強靱化といった政策により、我が国の製品や技術力の優位性を確保してまいります。そのために、技術流出対策や重要物資の安定供給のための支援にも引き続き取り組んでまいります。
日本の製造業は、急速に変化し続ける環境の中で、複雑で困難な課題に多く直面しています。しかし、それらに果敢に取り組みイノベーションを続けることで、成長を続けられると確信しています。引き続き、皆様の現場の生の声をお伺いし、それらを政策に活かしてまいります。
福島復興と東京電力福島第一原子力発電所の安全かつ着実な廃炉は、引き続き経済産業省の最重要課題であり、今後もこれらに全力で取り組みます。
さて、大阪・関西万博の開催までいよいよ3ヶ月を切りました。「未来社会の実験場」のコンセプトにふさわしい最先端分野の技術が国内外から集結いたします。ぜひ、会場まで足を運んでいただき、新たな産業の誕生と成長の可能性とそれがもたらす未来社会を間近で感じていただきたいと思っています。
本年が、皆様方にとって実りの多い一年となりますよう祈念して、新年の挨拶とさせていただきます。